為替相場はギリシャ危機でユーロ暴落のシナリオへ

緊縮財政が及ぼす悪影

ソブリン不安だけが問題というわけではない。欧州各国では現在財政改善策を進めている。特に財政不安国ではユーロ収斂基準である「財政赤字のGDP比3%以内」を13年(ポルトガル)あるいは14年(アイルランドとギリシャ)までに達成するため、厳しい財政緊縮策を進めている。

 

ギリシャについても厳しい財政引き締めを行っており、09年に15.4%であった財政赤字のGDP比を、10年には10.5%にまで引き下げた。GDPの6%弱に相当するデフレ政策をこの1年間で実施してきたことになる。ところが、これだけ厳しい緊縮財政を行ったにもかかわらず、目標値である「8.1%」に達しなかったことから、同国が今後計画通り財政改善を進めることはできないのではないかとの欧州当局の疑念を強めてしまった。これがギリシヤの債務再編を巡る議論に発展していったわけである。

 

債務再編を回避するため、そして計画通り14年までに財政赤字のGDP比を3%以内にするため、ギリシャ政府は今後もより一層ハードな財政緊縮策を実施せざるを得ないだろう。他の財政不安国についてもEU、IMFによる支援打ち切りをおそれ、積極的に財政引き締め策を進めることになると考えられる。

 

ところが各国が財政引き締め策(デフレ政策)を強行すれば、景気の悪化が続き、特に内需が打撃を受けることになる。そして、これは財政不安国の民間部門に貸し出している欧州大手行の不艮債権を増加させる要因となっている。世界の主な国の銀行のギリシヤ、ポルトガル、アイルランド、スペイン、イタリアへの与信残高は表2の通りであるが、現に、欧州大手行の中にはアイルランドやスペインの不動産向け融資の不良債権額が足元で増加傾向となっている銀行もみられる。欧州大手行の多くは、リーマンーショツク後の金融危機からようやく立ち直ってきたところであるが、この欧州財政不安国向け不良債権問題が新たな火ダネとなるかもしれない。場合によっては、欧州発の世界的な金融不安が起こる可能性すらはらんでいると言える。

 

ユーロ離脱論が再燃

 

ギリシヤ国債がデフォルトしなくても「ギリシヤのような問題を抱える国は通貨ユーロの安定性を妨げる元凶」と欧州当局が見なし、それが市場全体のコンセンサスとなっていけば、ギリシヤのユーロ離脱論が再燃する。

 

仮にギリシヤがユーロから離脱し、「ユーロ離脱国」の悪しき前例を作れば、市場は「次に離脱国となりそうな国」の国債を売口浴びせるようになるだろう。その結果、「ユーロ離脱候補国」に対する信用不安が高まり、これが通貨ユーロの更なる下落を引き起こすといった連鎖が繰り返されることになる。最終昨には統一通貨ユーロそのものの崩壊が現実昧を帯びてくることになると考えられる。

日本にとっては外需悪化が懸念

日本や米国の、欧州財政不安国向け与信残高は少ない。したがって、欧州財政不安国の不良債権による金融機関への経営への影響はほとんどないと考えられる。しかし、ギリシヤの債務再編を端緒とした欧州財政不安の拡散と欧州金融不安の再燃、さらには欧州各国の財政引き締めがもたらす各国の景気悪化は、通貨ユーロの急落(日本円、米ドルの高騰)とも相まって、日本と米国の外需悪化を招く可能性がある。これが、これまで好調だった中国を中心とする新興国経済をも巻き込み、世界的な景気悪化を引き起こすことも考えられる。

 

これこそ、「第2のリーマン・ショック」である。

 

欧州当局要人のなかにも、あるいは市場関係者のなかにも、ギリシャの「債務再編」の可能性を発言する人は多い。「ギリシャの債務再編」がギリシャだけで完結するのか、他の問題国にも広がってしまうのか。ギリシャやポルトガル、アイルランドに課せられた緊縮財政はそれらの国の景気をどこまで悪化させるのか。問題国のユーロ離脱や崩壊はないのか。欧州ソブリン危機の行方は、以上のような点について、十分に注意してみていくべきであろう。

独議会が欧州金融安定基金(EFSF)の機能拡充法案を可決したことにより、一先ずギリシャ不安は和らいだ格好となり、堅調なスタートが期待される。また、9月期末となることからドレッシング買いに対する期待感も下支えとなるだろう。また、日銀による為替介入への思惑もくすぶっている状況である。欧州債務問題への根強い不安感や中国の景気減速懸念などがくすぶるものの、FXでは売り込まれていたユーロや輸出関連など景気敏感セクターに対する日本株の買戻しが意識されそうである。