ギリシャ危機が為替相場に与える影響

ギリシャ危機は「第2のリーマンーショツク」になる可能性を秘めている

2008年のリーマンショツクのあとの米国発金融不安は、米ドルを急落させ、強烈な円高のために、日本でも電機・自動車セクターで「需要蒸発」と言われるほどの現象に直面。日本を代表する大手メーカーが大赤字となり、経営危機に陥るところもみられた。ギリシヤ危機が注目されるのは、この悪夢を再び起こさせる可能性があるからだ。ギリシヤ危機が世界経済危機を引き起こすまでのルートは、大きく3つに分けられる。

 

ギリシヤ国債がデフォルトした場合

 

ギリシヤが仮に債務再編となり、民間投資家をも巻き込んで損失負担が求められた場合、大きな損失を被るのは欧州中央銀行(ECB)だ。ECBは、公表はしていないが、ギリシャ国債を大量に保有しているとみられている。ギリシャが債務再編し、ギリシャ国債がデフォルトすれば、バランスシートが悪化する。これが、市場のRCBに対する信認の低下につながり、通貨ユーロの暴落を引き起こしかねないのである。

 

昨年5月以降、ECBは欧州ソブリン不安を抑制する目的から、各国中央銀行を通じて、ギリシヤなど財政不安国の国債買い取りを進めた。この結果、現在、ギリシヤ国債を最も多く保有しているのはECBである可能性が高い。ECBが公表した資料によれば、ギリシヤ国債の保有主体のうち、「その他海外部門」(民間金融機関、EU、IMF除く)の保有額は1500億ドル程度である。このうち、ECBがどの程度の額を保有しているかは非公表だが、ECBの資産規模約1.9兆7ユーロのうち、数%程度を占めると推測される。

 

マーケットは次のギリシヤを探す

 

欧州大手行が保有するギリシャ国債の残高は、多くの場合、その資産規模の割には少ない。ギリシャの一般政府債務残高(国債残高とほぽ同じ)は3500億ユーロ程度にすぎない。しかも、その約3分の1はギリシャの国内銀行や国内企業等が保有している。海外の銀行の保有残高は、わずか600億7千万ユーロ程度である(10年9月末時点のECBのデータ。先述のように、ECBによるギリシャ等の財政不安国の国債買い取りが進んだことから、現時点では、より少なくなっていると考えられる)。

 

欧州大手行には資産規模で1兆ユーロを優に超える銀行も多数存在している。そのような欧州の大手各行が保有しているギリシャ国債は、1行当たり数億ユーロから、多くても数十億7千ユーロ程度にすぎない。その国債が仮にデフォルトし、損失が発生したとしても、欧州大手行(ギリシャの国内行を除く)のなかで自己資本が大きく毀損するような銀行はおそらくないとみられる。したがってギリシャの債務再編が直接、欧州全体の金融不安に結びつくようなことはない。

 

ただし、ギリシャの債務再編が起これば、市場ではギリシャと同様に財政不安を抱えているポルトガルやアイルランドを次の標的に定め、「第2のギリシャ」の国債売りが進む可能性が高い。こうなれば、ポルトガルとアイルランドの国債利回りが急騰し、再びEU、IMFによる追加支援や債務再編を巡る議論が市場で高まってくることになると考えられる。

 

のみならず、スペインやイタリアといった欧州の大国にも市場の不安感が再び波及していくことも考えられなくはない。これら2国についても財政状況は決して良好とは言えないが、ギリシャ、アイルランド、ポルトガルのような切迫した財政危機に陥っているわけではなく、EUやIMFからの支援を今のところは必要としていない。このため、両国の国債利回りもここ最近は安定して推移していた。

 

しかしながら、ギリシャの債務再編が実際に起これば、市場の不安感がこれらの国にも再び伝播していく可能性がある。また、大国であるがゆえに、EUやIMFの既存の支援枠では救済できないのではないかとの疑心暗鬼が高まってくることも想定されよう。

 

ギリシャの国債がデフォルトするだけなら欧州の銀行に与える影響は軽微であると上で述べた。だが、ギリシャのデフォルトが他の欧州諸国にも波及し、多くの国で債務再編の危機にさらされれば、それら財政不安国の国債を大量に保有している欧州の大手行に対する市場の不安が高まる恐れがある。つまり、ギリシヤの債務再編が間接的に欧州金融不安を招ぐことは十分に考えられる。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

独議会が欧州金融安定基金(EFSF)の機能拡充法案を可決したことにより、一先ずギリシャ不安は和らいだ格好となり、堅調なスタートが期待される。また、9月期末となることからドレッシング買いに対する期待感も下支えとなるだろう。また、日銀による為替介入への思惑もくすぶっている状況である。欧州債務問題への根強い不安感や中国の景気減速懸念などがくすぶるものの、FXでは売り込まれていたユーロや輸出関連など景気敏感セクターに対する日本株の買戻しが意識されそうである。